あなたのマスクを下さい
コロナ過で会えない日々
毎日見るニュースでPCRというキーワード
マスク無しで外出できない日常
あなたの吐息がわたしの頬を伝う幸せ
少し前までマスクしてる人が異質
今はマスクしてない人が異質
「コロナに負けるな」
そんな言葉より
「アイシテル」をあなたから聴きたい
マスクでわからないけど
もうわたしの吐く息は白くなってきたよ
去年の冬は二人の白い息が重なりあってたクリスマス
今年はどうだろう
なにもかもおかしくなったけど
あなたは変わらないと思ってた
でも違った
マスクで覆われた唇は誰のモノ?
あなたのマスクを下さい
あなたの吐息を感じたいから
あなたの愛を逃がしたくないから
耳が痛くても逃がしたくないから
あなたのマスクを下さい
コロナで分かったあなたの気持ち
密です密です!二人は密です!
鍵のかかった部屋
わたしが通ったあなたの部屋
毎日あなたが帰ってくるのは待って
ごはんを食べて
実家暮らしのわたし
10時になったら帰る
休みの日はその部屋でゴロゴロ
出不精の二人はゴロゴロ
でも楽しかった
なんでもない日々
大切な日々・・だった
ちょうど3回目の夏が過ぎて
秋にはその部屋に行かなくなった
いや・・行けなくなった
突然の別れ
毎日通ってたからついつい仕事帰りに小田急線に乗ってしまう
あなたの部屋がある向ヶ丘遊園駅に向かって
多摩川を超えるともうすぐ・・
いつも多摩川を見ながら笑顔になってた
でも今は・・
「川崎は東京みたいなもんだよ」
あなたはいつもムキになってた
わたしが目白に住んでるからバカにしてるって・・
そんなことないのに・・
あなたが住んでたから凄く好きだった 川崎
でも今は訪れるとあなたの思い出ばかりで
現実と思い出が交錯して辛い
あなたの住んでた街
あなたが住んでた部屋
あなたからもらった部屋の鍵
もうあなたの部屋にその鍵を差しても開かない
あなたとの思い出の部屋
でも今は
ただの鍵のかかった部屋
緊急速報 Jアラートが鳴るたびに
緊急速報
Jアラートの音でわたしは一瞬心臓が止まる
大地震を経験したわたしたち
Jアラートが鳴るたびにあの時を思い出す
石巻にある大学に通ってたあなた
あの地震の時連絡が取れなくて
九州は大きな被害はなかったから最初は大丈夫だと思ってた
だけどテレビで東日本の悲惨な状況を目の当たりにして
わたしことの重大さに気付いた
携帯に連絡しても繋がらない
あなたの親に聞いても連絡がないと・・
いてもたってもいられない日は10日続いた
そして11日にあなたの親から無事だとの連絡
ずっと泣いてたから涙はもう出ないと思ってたけど
嬉し涙は別だった
本当よかった
それから地震速報やJアラートを聞くとあなたの無事を思うようになった
あなたの苗字になって一諸に住んでる今も
それは変わらない・・
SNSで繋ぐ愛情 フォロワーはわたしだけ
首筋に触れる唇 あなたの香りが忘れられない
母の日のプレゼントはあなたとの結婚
母子家庭で育ったわたし
母はわたしが小さいころに離婚
女手一つでわたしを育ててくれた
パートを掛け持ちして生活費を・・
わたしが寝たあとスナックのバイトもしてたを知ってる
わたしが気づかないように
だから私が大学にも行くことができたし
そんなにお金で不自由した思い出はない
だから早く自立して母親を楽にしてあげたかった
大学を卒業して地元に市役所に就職
そこで知りあった同じ市役所の後輩と婚約
わたしが結婚する人の条件
収入が安定している
長男以外(次男が良い)
浮気をしない
母親との同居ができる
この条件で探したの
正直見た目なんてどうでもよかった
そして見つけたのがあなた
優しくて
わたしの家庭環境を理解してくれて
なにより母がお気に入り
最初は条件だけで探してたけど
本当にいい人と出会ったと思う
だから今年に母に日のプレゼントは・・
あなたとの結婚
喜んでくれると思う
結婚したらわたしの実家で同居して
近い将来家を建てる
母の部屋も用意して
二世帯住宅じゃない
一世帯住宅
借家暮らしで苦労かけたから
マイホームに住ませてあげたい
あなたは母への最高のプレゼント
指先で送るアイシテル
あなたに出会ったから
あなたがいたから
恋を知った
恋が始まった
最初は指先で送る会話だけだった
なにげない出来事をお互い自分のペースで
でもだんだんそうじゃなくなった
携帯でいつもあなたを感じる手紙のマークを探してた
お互い仕事が忙しいから
遭えない日が続く
朝のメール
上司の愚痴メール
友達とのどうでもいいやりとりメール
コンビニで見つけたスイーツのメール
お父さんやお母さんやお兄ちゃんのどうでもいい話メール
おやすみメール
そして
愛してるメール
それがわたしとあなたを繋いでた
でもどちらかでもない
だんだんメールがお互い減り
なんでもないメールが送れられなくなった
指先が動かない夜が何度も
「アイシテル」の5文字が打てない
皆がLINEに変わってもわたしたちはメール
あのマークを感じてたから
あなたを感じてたから
でも・・
もう今はメールなんて入ることはない
あのマークと共にあなたはもういない
指先で送るアイシテル・・はもう届かない
非常事態宣言
あなたはわがまま
自分の思い通りにいかないと怒りだす
だから人と揉めるし
今までの彼女だって愛想をつかされて別れたって話してた
そんなあなただけど
本当は優しくて
不器用だけどまっすぐな性格
わたしのことも大切にしてくれる
そんなあなたが愛おしくて
だけどわたしだって甘えたい時だってある
ずっと我慢してたらどこかに行きたくなる
非常事態宣言は届いてる?
そしたら・・
和の結婚式が流行ってるらしいなんてあなたらしくないLINEが
そっけない返事をしたら
今度見に行こう・・って
非常事態宣言は解除
だけど
ほっとくといつ発令するかわからないよ