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セミの声ももう聞こえない
長袖をしまってあったコローゼットから懐かしい写真を見つけた
あなたと花火をした写真
あなたはお気に入りのA・P・CのTシャツ
わたしはあなたにもらったハリランのTシャツ
日焼けしたあなたは白い歯がまぶしくて笑顔がまぶしい
あなたの大学は向ヶ丘遊園駅の近くで私の短大は都内
いつも新宿まで20分とか神奈川だけど都心に近いとか・・
だれもバカにしてないのにムキになって話してた
大学の近くに住むあなたにわたしが「そんなに気にするなら都心に住めば」と言うと・・
「都会は怖い 住むのは地元の大分に似た自然が多いところのほうがいい」と・・
よくわからないけど・・そんなところも好きだった
わたしは東京生まれで東京育ち 田舎がないわたしに田舎を熱く語ってくれた
テレビのチャンネルが3つしかないとか・・
「笑っていいとも」が夕方放送されてて全然お昼休みはウキウキウォッチングじゃないとか・・
山も海も綺麗とか・・
友達のエピソードとか・・
色々話してくれた・・
一度何でそんなに話してくれるの?と聞くと
「田舎や昔のことを思う時にいつもその場面にお前が出てこない・・」
「それが嫌だから俺の思い出や好きな地元の話を全部して・・この思い出は、この地元のことはあいつに話したなって」
「そうしたら思い出も田舎を思う度にお前が出てくる」
「そしていつかお前を友達に紹介して地元のいろんなところに連れて行きたい」
そんなまっすぐでやさしいあなたが好きだった
わたしはもう東京以外に住むことはないだろう
田舎を知らず
「お俺は田舎で就職する 俺と結婚したら東京が田舎になるよ」って言葉が嬉しかった
でもわたしはできなかった
田舎が欲しかったけどあなたと一諸になれなかった
窓から入る風が冷たい
着ることのないハリランのTシャツと写真をクローゼットの奥にしまい込んで・・
目黒駅で待ってる旦那を迎えに行くため車にの乗りこんだ・・
夏の終わりと共に感傷的な気持ちが・・
秋の気配は様々な淡い思い出がよみがえる・・