渡せなかった手紙
あなたは幼馴染
同じ町に生まれ
同じ幼稚園
同じ小学校
同じ中学校
同じ高校
親同士も仲が良かったから家族ぐるみ
あなたがイタリア料理人を目指そうとしたのはわたしの家での出来事から
あなたがわたしの家に遊びに来た時
料理好きのわたしの母がつくったカルボナーラを食べて・・
凄く感動してた!
その場で母に作り方を教えてもらって
そからというもの憑れたようにイタリア料理人になるって言ってた
あなたの家は厳しくて料理人になることを反対されてたからキッチンが使えず
わたしの家によく来てわたしの母と料理してた
わたしの母が最初に師匠
母は・・
あなたに料理を最初に教えたのは、わたしだっていつも自慢してる
そう・・世界的な料理人になったあなたに
高校は行かず料理に世界に行きたいあなた
医者になってほしいあなたの両親
あなたはしぶしぶ高校は進学校に行ったけど
進路でザワザワしてる高校3年の夏
あなたが高校卒業後イタリアに行くって噂が広がった
成績がトップのあなたが
それも料理人を目指して
歴史ある県内一の進学校のトップが・・
学校やあなたの親は猛反対
でも意志は固った
あなたが高校入学からアルバイトをいっぱいしてた理由がその時わかった
親は反対するだろうからイタリアに行く資金は自分で準備しておく
真の強いあなたはずっと前から計画してたんだね
あなたの夢
あなたの夢を叶えてあげたくて
わたしの母に相談して家のキッチンを使うこと
わたしの母に料理を教えてあげてほしいってお願いしたこと
あなたの夢を叶えてあげたくて・・じゃない
本当はあなた好きでずっと側にいたくて・・
いつも一諸にいたかったから
あなたにとってわたしは良き理解者
でもわたしはそうじゃない
ただ好きなだけ
ただ・・
イタリアに旅立つ日
同級生やわたしの母も一諸に見送り
そして遠くに学校の先生
あなたの両親も・・
よかった
みんなに見送られて
本当に良かった
わたしは見送る中の一人
しょうがないけど少し寂しい
あなたが機内に向かう前
わたしにこう言った
「今まで本当にありがとう!有名なイタリア料理人になって帰ってくるから!元気でな!」
帰ってくるからの言葉嬉しかった
あなたと握手したときわたしが「あの・・」って言ったけど同級生たち突然胴上げを始めて
最後まで言うことができなかった
そして渡すことができなかった
あなたへの手紙
それはポーチの中
そしてあなたは旅立って行った
それから10年後あなたの店が三ツ星レストランになったことが日本でも報道された
メディアで大きく報道される昔と変わらないキラキラしたあなた
あなたの夢は叶ったのかな
わたしの夢は叶いそうにない
その夢はあの時渡すはずだった手紙に書いてた
そうわたしの夢をあなたとイタリア料理店を開くこと
あなたへの手紙
それはまだ・・ポーチの中