帰らない

お互いに部活をしてた二人は部活終わりにあなたの家まで送る時間が唯一のデート
あんまり遅くなると親も心配するだろうと思って、まだ一緒にいたい気持ちを抑えあなたの家の近くの橋で「バイバイ また明日!」
そんな毎日が楽しかった

サッカー部とハンドボール部
背が高くショートカットが似合う小さな顔と整った目鼻立ち
高校入学してすぐ一目惚れ
下駄箱の前の階段で告白してオッケーをもらったね
本当に綺麗で…
日頃はボーイッシで活発だけど二人でいる時にふと照れる仕草が愛しかった
いつも通り部活終わりに一緒に帰ってたら来週の日曜日は奇跡的に二人共部活がない可能性が…
ただし条件が…
今週末サッカー部が大会で負けたら
複雑な自分を尻目にあなたは大ハシャギ
結果は…逆転勝利…
それも逆転弾は自分
歓喜の輪の中浮かない顔は自分だけ…
試合後の週明けの楽しいはずの部活終わりの帰り道は無言すぎて境川の水が流れる音がやけに大きく聞こえる…
そしていつもの橋に着くとあなたは橋の下に降りてしまった
慌てて降りて駆け寄った自分に「今日は帰らない!」
このとき自分はこの女性特有なわがままに対応できるほど女性経験がなかった
なんせ初めての彼女
マンガやドラマのようにうまくいかない
「帰らないと…」
「親が心配するよ…」
「9時になるよ…」と3つの言葉をただただ繰り返し言う自分
「帰らない」と言い続けるあなたに勇気を出してあるおまじないを…
「帰るよ」と言うとあなたは軽く頷いて無事に帰ることに…
十年以上経った今、自分は四歳になった娘を連れてあなたとの思い出の橋の下に来てみました
何にも変わってないなと感傷にふけり、そろそろ帰ろうと娘に言うと「今日は帰らない」と…
どこかで聞いたことがある言葉だが
自分もそれなりに経験を積んで年齢を重ねてきたし…あのおまじないがあるし
そしてそのおまじないを娘に…
頬にキスをして「帰るよ」と言うと…
娘は大きな声で「絶・対・帰・ら・な・い」
橋の上から声が・・
あなたが「迎えに来たよ〜」って呑気に言うから
つい、つぶやいてしまった
この子はあなた似じゃない・・おまじないがきかないよ・・



あなたはあの時、夢を叶えると言ってトウキョウへ行ってしまった。
私はこの街にずっと居る
あなたがこの街に帰ってきたことを風の便りで聞いた。
あなたが夢を叶えたかどうかは知らないけど…
私が叶えることができるかわからないけど…
私はあなたを幸せにしてやる
トウキョウに行ったことを笑って話せるように
側にいて幸せにしてやる
この街で



ミスチル

七歳年上のあなた
ミスチルが好きでドライブ中に聴こえてくるのはそのバンドの曲ばかり
「ミスチルは嫌いじゃないけどたまには西野カナにしてよ」と言うと
「俺はミスチルが好きなんだよ。車の中で聴くのミスチル…」
怪訝そうな私に少し大きな声で
「今まで付き合った人からそんなこと言われたことないしみんな好きだった…」」
「じゃあ私は嫌い!」と言って車から出ようとする私に少し申し訳なさそうな表情をしてすぐに怒った顔で「勝手にしろ」
車を出て歩いてく私は
何回も「ミスチルなんか嫌い」呟いていた
1時間も経たないうちに「ゴメン。迎えに行く」とのメール。
私も少し大人げないなと「北石垣公園にいる」と返信するとあなたの車が…
泣きそうなあなたは車のドアを開けると…
聴こえてきたのは聞き覚えがある音楽が…
「ねぇーダーリン♪」
半分開いたCDケースを急いで後部座席に置いたあなた
「ゴメン…」と言ったあなたに
私は「ミスチルのクロスロードが聴きたい」と意地悪を言う
もっと困ったあなたはかわいかった
私のトリセツは少しずつ勉強中みたい



薬指

優しいあなたが好き
でもキライ
薬指のリングを外して会ってくれる
でも日焼けしてないリング跡が見えてる
優しいから余計悲しい
優しいあなたが好き
優しいあなたがキライ



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「あ〜雨だよ ママ」
朝起きてきた娘が私に言った
そして「また、ママが笑ってる」といつものように呆れてる
私は雨の日が好き
あなたが雨が好きだったから
「俺、雨の日は外に出たくなるんだよ…変かな?」
あなたはいつも学校の下駄箱の前で傘を片手に目をキラキラさせてた
それから何百回、何千回、雨の日があっただろう。
雨の日はあなたに会えるかも
そんな気持ちで幾千回の雨の日を過ごしてきた
「ママ…まだ笑ってる!」
少し怒って長靴を用意してる娘に、この笑顔の意味を言えるのは…
まだまだ先になりそう




すきじゃない

ワタシはあなたがスキじゃない
あなたはワタシをスキだと言う
もう一度ワタシはあなたがスキじゃないと言う
あなたはスキじゃなくていいと言う
あなたは嫌いじゃなければいつかスキになると言う
不機嫌なわたし
でもこんなやり取りはキライじゃない



ゆっくり

たまにはゆっくり食べなよ
あなたはそんなことを言う
あなたらしくない
涙が止まらない
手が震えてフォ―クでサラダが取れない
何も変わらない毎日
何も変わらない育児・家事
たまの外食もいつも幼い子達に食べさせて
私は最後に冷めた料理を素早く口に入れる
いつもあなたは携帯を見ながら料理を食べて色々話してる
母親だからしょうがないと言い聞かせ
これが幸せと言い聞かせ
それなのに今日は
あなたはハンバーグ定食を素早く食べてしまい
子どもたちを抱え食べさせている
そしてこの言葉
「たまにはゆっくり食べなよ」
「これ」でも「あれ」でも「それ」でもない

ワタシは幸せ



赤信号

赤信号が好き
黄色信号が見えたら早く赤になれって心の中でお願いする
あなたは赤信号が多いと「ブレーキ踏んでゴメンね」って謝るけど
謝らないで
赤信号を願ってるのは私
なぜって赤信号のたびに・・助手席の私を見てくれるから