あなたに出会ったから
あなたがいたから
恋を知った
恋が始まった
最初は指先で送る会話だけだった
なにげない出来事をお互い自分のペースで
でもだんだんそうじゃなくなった
携帯でいつもあなたを感じる手紙のマークを探してた
お互い仕事が忙しいから
遭えない日が続く
朝のメール
上司の愚痴メール
友達とのどうでもいいやりとりメール
コンビニで見つけたスイーツのメール
お父さんやお母さんやお兄ちゃんのどうでもいい話メール
おやすみメール
そして
愛してるメール
それがわたしとあなたを繋いでた
でもどちらかでもない
だんだんメールがお互い減り
なんでもないメールが送れられなくなった
指先が動かない夜が何度も
「アイシテル」の5文字が打てない
皆がLINEに変わってもわたしたちはメール
あのマークを感じてたから
あなたを感じてたから
でも・・
もう今はメールなんて入ることはない
あのマークと共にあなたはもういない
指先で送るアイシテル・・はもう届かない
非常事態宣言
あなたはわがまま
自分の思い通りにいかないと怒りだす
だから人と揉めるし
今までの彼女だって愛想をつかされて別れたって話してた
そんなあなただけど
本当は優しくて
不器用だけどまっすぐな性格
わたしのことも大切にしてくれる
そんなあなたが愛おしくて
だけどわたしだって甘えたい時だってある
ずっと我慢してたらどこかに行きたくなる
非常事態宣言は届いてる?
そしたら・・
和の結婚式が流行ってるらしいなんてあなたらしくないLINEが
そっけない返事をしたら
今度見に行こう・・って
非常事態宣言は解除
だけど
ほっとくといつ発令するかわからないよ
うちで踊ろう
うちで踊ろう
外には出れない
出られない
偉い人が言ってる
パンデミック・・クラスター・・
聞きなれない言葉に戸惑う私たち
あなたはいつも明るいから
笑顔でニュースを見てる
不安だねって言うと
大丈夫と言って・・
「踊ろう!」
「うちで踊ろう!」
携帯から流れる音楽に合わせて踊るわたしとあなた
うちにいるのも楽しい
グッドドクター 恋の病
あなたに会って恋をした
あなたに会って恋の病に
でも今まで人を好きになれなかった病に比べたら
幸せ
人を好きなることなんてないと思ってた
グッドドクター
恋の病を発症させ
心の闇を治すドクター
あなたに会えてよかった
グッドドクター
LOVE LETTER 思い出はポケットの中
槙原敬之「LOVE LETER」
あなたはこの曲が好きだった
そしてその歌詞のように
あなたには渡せなかった
あなたへの「LOVE LETER」
あなたは大学のサークルの先輩
二つ年下のわたしは青森から上京
大学の掲示板の前で声をかけてきた
サークルの勧誘
青森から出てきて初めて話したのがあなた
背が高くてどこか方言があって東京の人って感じじゃなかった
後で聞いたら九州出身
九州弁が抜けないって話してた
津軽弁が少しコンプレックスだったわたしに
「東北弁ってかわいいな!東北の人って本当に色白だね。俺色白な女に弱い」って初対面で言われた
なにかの縁と思いあなたがいるサークルへ
何をするわけでもないただの飲み会サークル
でも色々友達ができてよかった
最初の頃は「この子は東北から来て訛ってるけどバカにすんなよ!俺のお気に入りだからバカにしたら俺が許さんけんな」だって・・
九州の人の話し方は男らしい
そんなこんなで交際がスタート
1年が過ぎあなたは就職活動
あなたは地元に就職予定
実家が事業をしてるから関係会社に就職して修行
俺の地元に来て将来の社長夫人になるかって笑いながら言うあなた
悪くない
あなたと一諸なら
そんな気持ちなんて気づかない
就職が決まりあなたとわたしは離れ離れ
別れる話もなく続けていく話もなく
ただ時間が過ぎ
あなたが地元に帰れる日東京駅にサークル仲間と見送り
あなたの声とサークル仲間の声が砂利に吸い込まれて
電車が通るたびにとぎれとぎれに聞きなれたあなたの声が聞こえる
風通しの悪さと人の熱気で汗ばむわたしにハンカチを差し出すあなた
そしてこう言った
「卒業したらでいいから俺の地元に来てくれないか」
突然で返事ができなかった
あなたが乗る新幹線が出る時間
あなたは乗り込み一生懸命手を振ってた
そして新幹線はあなたが変える南に向かって走りだした
本当は手紙を渡すはずだったの
内容は
今すぐでもあなたが帰る街に行きたい
大学なんて辞めていい
あなたと一諸になれるなら
立派な社長夫人になるから
そんな内容の手紙をポケットの中に
あなたが好きだった曲みたいに渡しそびれないようにと
絶対渡そうと思ってたけど・・
渡せなかった
なぜかわからない
わたしは平凡なサラリーマンの妻
それなりに幸せ
社長夫人でもないし
九州に住んでない
東京でそれなりに暮らしてる
でも
あの時のLOVELETERは・・
まだポケットの中にしまったまま
濃厚接触
あなたと濃厚接触したい
手を繋いで
抱きしめられて
キスされて
こんな時だからこそ
触れてしたい
不安な気持ちを失くして
あなたの傍にいたい
マスクも持ってる
手洗いもうがいも毎日してる
あなたに会える日を楽しみに生きてる
濃厚接触してもいいでしょ?
夢の途中 あなたとわたしの夢は続く
わたしの夢は
あなたの夢
あなたの夢は
わたしの夢
それ以上でもそれ以下でもない
限りある時間の中
あなたと一諸といたい
それが叶わない夢だとしても
夢なんて言葉忘れればいい
二人で歩んだ軌跡
それは正しいも間違いもない
二人が歩んだ奇跡
だからずっと一諸にいよう
二人で夢を追い続ければいい
追い続けることが二人のゴール
逃さないように
忘れないように
苦しくなったとき
目を瞑ったとき
お互いが浮かべばオーケー
夢の途中
二人の夢は続く・・
でられなかった卒業式 わたしはまだ卒業していない・・
卒業式
それはわたしがあなたから卒業する日だった
でも卒業式にでることができなかった
わたしとあなたが出会ったのは高校2年生の春
最初は同じクラスで仲の良いグループにいただけ
でもその年の夏にあなたから告白されて付き合うように・・
お互いおっとりとした性格でケンカもなく楽しかった
でも一つだけ心配が
進学校に通う私たちは勉強が忙しい
デートはもっぱら図書館
地元の国立大学の医学部を目指すあなたと
東京の外国語大学を目指すわたし
卒業後は離れ離れ
俗にいう遠距離恋愛になるのはわかってた
それでもお互い目標に向かって励まし合ってた
そして高校3年の冬
いよいよ受験の時期にわたしが病気に
親は何の病気は教えてくれなかった
年明けの1月から入院
お医者さんからは受験は諦めたほうがいいと・・
落ち込むわたしの病室には毎日あなたはお見舞いに来てくれた
受験勉強が大変なのに優しいあなた
でもそんなあなたにわたしは酷いことを言ってしまった
病室でいつも通りお見舞いに来てたあなたと話してたとき
ふとあなたがこう言った
「病気で受験できなくて残念だけど俺はお前と4月以降も一諸にいれるから幸せだよ」
たぶん悪気があったわけじゃない
でも外語大を目指してたわたしはその言葉が許せなくて
「わたしの気持ちなんてわかってない!出ていって!もう別れて!」
そう言って謝るあなたを無視して外に追い出した
親や看護師には二度と病室に入れないようにお願いした
毎日毎日病院に来るあなただけどわたしは拒否した
先が見えない入院生活にイライラしてたのかも
あなたは無事地元の医大に合格
わたしは卒業式には一時退院して参加していいって先生から言われてた
だから卒業式に出てあなたにちゃんと謝るつもりだった
そしてずっと側にいてほしいって言うつもりだった
ごめんなさいって
でもできなかった
わたしの病状が急変して卒業式にはでれなくなった
昏睡状態が3日も続いて・・
なんとか回復したときは卒業式の二日後
わたしの高校生活は病室で終わった
あなたに謝ろうと思ってたのに
そして、あなたがわたしの病室に来ることはなかった
酷いことを言ったし酷いことをしたから自業自得
でもやっぱり寂しかった
親や友達にこの気持ちを伝えてもらうことはできたけど
先が見えない不安でできなかった
だから卒業式なら言えるような気がしてた
あなたに甘えて
卒業式は夢幻
あなたとの未来も幻に
今わたしは年に数回の入院をしながら生活してる
あなたは地元の県立病院に勤務してる
あなたが務める県立病院にも何回か入院したこともある
でもあなたと会うことはなかった
今からも会うことがないでしょう
結婚して幸せなあなた
わたしはあの卒業式にでることができなかってこと悔んで生きてる
本当に優しかったあなただから
わたしたちはもう会わないほうがいい
でも・・どこか寂しい時がある
わたしは卒業してないから
高校・・
そして
あなたからも
渡せなかった手紙 イタリアで元気にしてますか?
渡せなかった手紙
あなたは幼馴染
同じ町に生まれ
同じ幼稚園
同じ小学校
同じ中学校
同じ高校
親同士も仲が良かったから家族ぐるみ
あなたがイタリア料理人を目指そうとしたのはわたしの家での出来事から
あなたがわたしの家に遊びに来た時
料理好きのわたしの母がつくったカルボナーラを食べて・・
凄く感動してた!
その場で母に作り方を教えてもらって
そからというもの憑れたようにイタリア料理人になるって言ってた
あなたの家は厳しくて料理人になることを反対されてたからキッチンが使えず
わたしの家によく来てわたしの母と料理してた
わたしの母が最初に師匠
母は・・
あなたに料理を最初に教えたのは、わたしだっていつも自慢してる
そう・・世界的な料理人になったあなたに
高校は行かず料理に世界に行きたいあなた
医者になってほしいあなたの両親
あなたはしぶしぶ高校は進学校に行ったけど
進路でザワザワしてる高校3年の夏
あなたが高校卒業後イタリアに行くって噂が広がった
成績がトップのあなたが
それも料理人を目指して
歴史ある県内一の進学校のトップが・・
学校やあなたの親は猛反対
でも意志は固った
あなたが高校入学からアルバイトをいっぱいしてた理由がその時わかった
親は反対するだろうからイタリアに行く資金は自分で準備しておく
真の強いあなたはずっと前から計画してたんだね
あなたの夢
あなたの夢を叶えてあげたくて
わたしの母に相談して家のキッチンを使うこと
わたしの母に料理を教えてあげてほしいってお願いしたこと
あなたの夢を叶えてあげたくて・・じゃない
本当はあなた好きでずっと側にいたくて・・
いつも一諸にいたかったから
あなたにとってわたしは良き理解者
でもわたしはそうじゃない
ただ好きなだけ
ただ・・
イタリアに旅立つ日
同級生やわたしの母も一諸に見送り
そして遠くに学校の先生
あなたの両親も・・
よかった
みんなに見送られて
本当に良かった
わたしは見送る中の一人
しょうがないけど少し寂しい
あなたが機内に向かう前
わたしにこう言った
「今まで本当にありがとう!有名なイタリア料理人になって帰ってくるから!元気でな!」
帰ってくるからの言葉嬉しかった
あなたと握手したときわたしが「あの・・」って言ったけど同級生たち突然胴上げを始めて
最後まで言うことができなかった
そして渡すことができなかった
あなたへの手紙
それはポーチの中
そしてあなたは旅立って行った
それから10年後あなたの店が三ツ星レストランになったことが日本でも報道された
メディアで大きく報道される昔と変わらないキラキラしたあなた
あなたの夢は叶ったのかな
わたしの夢は叶いそうにない
その夢はあの時渡すはずだった手紙に書いてた
そうわたしの夢をあなたとイタリア料理店を開くこと
あなたへの手紙
それはまだ・・ポーチの中
レミオロメン 3月9日 この日はあなたとの大切な日
3月9日
少しだけ暖かくなる3月初旬
暖かい風を感じると
この日が近ずくと
あなたとの思い出が
あなたと過ごした5年間
6回目の3月9日はひとりだった
それからもずっとひとり
ラジオから流れるレミオロメンの「3月9日」
この曲は切なくて
春の歌なのに
わたしには特別な曲
始めてこの曲を知ったのはあなたの車のカーステレオから
あなたが何度も好きだって言ってた
だからこの日は私たち二人にとって記念日でもなんでもないけど
ふたりの特別な日
一諸にいて食事して
なんでもない普通のデートでいいから一諸にいようってあなたは言ってた
そして
「この日に結婚式をあげよう」
「結婚しても毎年この日は必ずデートしよう」
いつもこの話をするあなた
わたしはその言葉が嬉しかった
本当に嬉しかった
本当にそれが叶うと思ってた
でも無理だった
あなたと過ごした5回目の3月9日
食事をしてドライブしてあの曲をふたりで聞いて
幸せな時間
そして11時を過ぎてわたしの家に送ってくれた時
急に真面目な顔でわたしを見つめて
「来年はデートもドライブできない」
わたしは驚いて
「なぜ?」
泣きそうなわたしに
あなたは・・
「来年の今日は決婚式の予定だから」
「ダメ?」
わたしは泣きながらあなたに何度も
「バカ」「バカ」って
笑いながら抱きしめてくれた
優しくそして強く
凄く幸せだった
ずっと抱きしめてくれると思った
あの日が最後だなんて思いもしなかった
そう・・
まさか・・
あの日わたしを送ってくれた後
10号線でカーブを曲がり切れず帰らぬ人に
何もかも失い
何もかも信じられなくなった
あなたが優しく抱きしめてくれた感触
あなたの声
あなたの香り
そして車から流れてたあの曲
何もかも覚えている
「思い出にしないと」
「前に進まないと」
そう思って必死に努力したけど
忘れられるように努力したけど
あの曲が流れてくると
あなたが好きだったあの曲が流れてくると
思い出にできなくなる
ダメなわたしを笑ってるかな
ダメなわたしは・・
相変わらず3月9日をあなたと過ごしてる
この先もずっと・・
だってあなたが決めた・・
約束だから